血液検査の結果から分かることとは?結果から分かることや項目・基準値について解説
更新日:2024年07月26日
この記事では、血液検査で見られる主な項目、それらがどんな意味を持つのか、そして判断するための基準値について詳しく解説します。
血液検査の結果から何が分かるの?
健康診断や人間ドックで行われる血液検査は、身体の健康を知るための大切な手がかりを提供してくれます。血液の成分を詳しく調べることで、身体の中のさまざまな部分がどのように機能しているか、何か問題がないかを知ることができます。
貧血や白血病、心筋梗塞、甲状腺機能低下症などの病気を示すことがあります。
関節リウマチや膠原病、B型・C型肝炎、急性胃炎などの病気がわかることがあります。
肝臓や腎臓の病気、甲状腺疾患、高脂血症、動脈硬化、糖尿病、痛風、心筋梗塞などの病気を示すことがあります。
血液検査の項目と基準値
血液検査は、体内のさまざまな成分を測定し、その数値は健康のバロメーターです。基準値を超えた場合には、なにか疾患が潜んでいる可能性があります。ここでは血液検査の項目と異常な数値の場合に可能性のある病気について、わかりやすく説明します。
血液学検査
検査名 | 基準値 | 数値が正常でない場合に可能性のある病気 |
---|---|---|
赤血球 | 女性: 360~489(×10⁴/mm³) 男性: 400~539(×10⁴/mm³) |
貧血、多血症 |
白血球 | 33~89(×10²/mm³) | 白血病や感染症、アレルギーなど |
ヘモグロビン | 女性: 11.4~14.6 g/dL 男性: 13.0~16.6 g/dL |
貧血、多血症 |
ヘマトクリット | 女性: 34.0~43.9% 男性: 38.0~48.9% |
貧血、多血症 |
糖代謝検査
空腹時血糖 | 100mg/dL未満 | 糖尿病や肝硬変、甲状腺機能亢進症など |
脂質代謝検査
総コレステロール | 140~199mg/dL | 脂質異常症、家族性高コレステロール血症、ホルモンの病気や、栄養吸収障害など |
中性脂肪 | 150mg/dL未満 | 脂質異常症や動脈硬化、低栄養、肝硬変や膵炎など |
LDL-コレステロール | 120mg/dL未満 | 脂質異常症や動脈硬化、肝硬変、腎臓病など |
HDL-コレステロール | 40mg/dL以上 | 肝硬変や脂肪肝、アルコール性肝炎、心筋梗塞、急性・慢性肝炎など |
【肝機能検査】
AST | 30U/L以下 | 肝硬変や糖尿病、甲状腺機能亢進症など |
ALT | 30U/L以下 | 肝硬変や脂肪肝、急性・慢性肝炎、アルコール性肝炎、心筋梗塞など |
γ-GTP | 50U/L以下 | アルコールの過剰摂取、薬物摂取、肝臓疾患、胆道の疾患など |
【腎臓機能検査】
尿酸 | 7.0mg/dL以下 | 痛風や高尿酸血症など |
クレアチニン | 女性 0.80 mg/dL以下 男性 1.10 mg/dL以下 |
腎臓疾患や心不全、筋ジストロフィーや肝硬変など |
eGFR値 | 60.0 mL/分/1.73㎡以上 | 慢性腎臓病など |
血液検査の数値が異常でも、病気があるとは限りません。身体の状態を知るためには、CTスキャンや超音波検査、レントゲン、細胞の検査、内視鏡などくわしく調べることが大切です。
肝臓の検査
肝臓の健康をチェックするために行う血液検査では、肝臓の細胞がどのように機能しているか、障害があるかを調べます。
・ASTとALT
数値が高い場合、肝細胞が損傷している可能性があります。
・γ-GTP
アルコールの過剰摂取が原因で高くなることが多い項目です。
・アルブミン、総タンパク、総コレステロール
数値が低い場合、栄養状態が悪いか、肝臓に何らかの問題があるかもしれません。
・ビリルビン、ALP
高い数値は、胆汁の流れが阻害されているか、肝炎や肝がんなどの病気がある可能性を示しています。
・アンモニア
肝臓の予備能力が低下していると数値が高くなります。
・ヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン
数値が多いと、肝臓の線維化が進んでいることを示し、肝機能の低下が疑われます。
・血小板数
数が少ない場合は、肝硬変の可能性があります。
腎臓の検査
血液検査で腎臓の機能を調べる際には、クレアチニン、BUN、GFRの数値が重要です。腎臓がどれだけうまく働いているかを示し、健康状態を把握するのに役立ちます。
・クレアチニン
筋肉の活動によって生じる廃棄物で、尿として排出されます。数値が高い場合、腎臓の機能が低下している可能性があります。
・BUN
体内のタンパク質が分解されたときに生じる老廃物です。腎臓の問題の他に、脱水などでも数値が高くなります。
尿酸の検査
尿酸は、プリン体というタンパク質が分解される過程で生じる副産物です。尿酸が過剰に生成されたり、排出がうまくいかなかったりした場合、血中の尿酸濃度が上昇し「高尿酸血症」という状態になります。この状態が持続すると、尿酸が結晶化して関節に溜まり炎症や激しい痛みを引き起こす「痛風発作」につながることがあります。
炎症反応の検査
炎症反応を調べる検査として、CRP、RA、ASOがあります。
・CRP
体が炎症に反応して、血液中に増えるタンパク質です。値が上がりますが、どの病気による炎症かは特定できません。しかし、病気の重さや治療の効果をチェックするのに役立ちます。正常値は0.3 mg/dl以下が一般的です。
・RA
リウマチ因子は、通常は血液中にない成分で慢性関節リウマチの診断に使われる検査です。リウマチ患者の約80〜85%でこの検査が陽性になりますが、病気の初期では陰性の場合もあります。また、リウマチ以外の病気や加齢によっても陽性になることがあります。
・ASO
溶連菌感染に対する体の防御反応を示す抗体です。感染後約1週間でASOの値が上がり始め、感染初期には陰性の結果が出ることもあります。健康な人のASOの値は240 IU/ml以下です。
脂質系の検査
脂質検査は、私たちの血液中にどれだけの脂質があるかを測るための検査です。主に、コレステロールと中性脂肪という二つのタイプの脂質を調べます。
脂質は水に溶けにくいため、リポ蛋白という特別なタンパク質に包まれて血液中を流れています。脂質検査では、リポ蛋白に含まれる脂質の量を測定する方法です。LDLコレステロールとHDLコレステロールの量をそれぞれ測定することで、心臓病などのリスクを評価できます。
糖代謝系の検査
糖代謝系の検査は、糖尿病の診断に役立つ検査です。
・血糖
血液中の糖の濃度を示し、食事によって変動します。空腹時血糖は、10時間以上食べていない状態で測定し126mg/dL以上の場合は糖尿病の可能性があります。
・HbA1c
糖と結合したヘモグロビンの割合を測定し、過去1〜2ヶ月の血糖値の平均を反映します。
・尿糖
血糖値が高くなりすぎると尿中に糖が出る現象を利用した検査で、通常は血糖値が160〜180mg/dLを超えた時に検出されます。
血球系の検査
血球系の検査では赤血球や白血球などを調べます。
・赤血球
赤血球は、酸素を肺から体の各部に運び、二酸化炭素を肺に戻す役割を持っています。赤血球の数が多いと「多血症」、少ないと「貧血」の可能性があります。
・ヘモグロビン
ヘモグロビンは赤血球の主要な成分で、酸素と二酸化炭素の運搬を助けます。ヘモグロビンが減少した場合、鉄欠乏性貧血や出血の可能性が考えられます。
・ヘマトクリット値
ヘマトクリット値は、血液中の赤血球が占める割合を示します。この値が低いと貧血、高いと多血症や脱水状態が疑われます。
・白血球
白血球は体を病原体から守る免疫細胞です。数値が高い場合は感染症や炎症、腫瘍が疑われ、低い場合はウイルス感染症や薬剤による影響、貧血などが考えられます。
・白血球分画
白血球は好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球の5種類に分けられ、それぞれが異なる役割を持っています。これらの白血球の割合を白血球分画といい、通常、好中球が40.0〜75.0%、好酸球が0.0〜8.0%、好塩基球が0.0〜2.0%、単球が2.0〜10.0%、リンパ球が18.0〜49.0%の範囲にあります。
・血小板数
血小板は出血を止めるために重要な役割を果たします。正常な血小板数は14.5〜34.0万個です。数値が高い場合は血小板血症、低い場合は貧血や免疫系の問題が疑われます。
血液検査は何科でできる?
血液検査を受けたい場合は、何を調べたいかによっても変わります。健康チェックであれば内科やかかりつけのクリニック、検診センターなどを受診しましょう。もし特定の症状や心配がある場合は、その症状に関連する専門科を直接受診してください。
まとめ
血液検査は、健康状態の把握に欠かせない診断方法です。赤血球や白血球の数、ヘモグロビンの濃度、血小板の数、血糖値、コレステロールなどの項目を調べることで身体の中の情報を得られます。それらのデータから貧血、感染症、糖尿病、心臓病などの病状を推測できます。
血液検査で異常な数値が見られた場合には、さらに詳細な検査や治療が必要になるかもしれません。定期的な血液検査は、病気の早期発見や健康管理に役立てることが可能です。
医師
久高 将太
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専門領域分類:内分泌代謝科, 総合内科, 糖尿病内科, 産業医, 疫学, 救急科
経歴:琉球大学医学部医学科卒業 / 琉球大学病院勤務 / 専門は内分泌代謝・糖尿病内科、総合内科
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