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アスタット軟膏(ラノコナゾール)に含まれている成分や効果、副作用などについて解説

監修薬剤師 小村 稜
更新日:2024年02月27日

更新日:2024年02月27日

アスタット軟膏(ラノコナゾール)に含まれている成分や効果、副作用などについて解説のイメージ
病院やクリニックなど医療機関でのみ取り扱われる医療用医薬品「アスタット軟膏(ラノコナゾール)」はご存じですか。

今回は外用抗真菌剤として知られる「アスタット軟膏(ラノコナゾール)」について成分の特徴や効果、副作用について解説します。

医療用医薬品のみならず、有効成分であるラノコナゾールが配合されている市販薬についても解説していますので最後までご覧ください。

アスタット軟膏(ラノコナゾール)とは

「アスタット軟膏(ラノコナゾール)」とは、白癬、カンジダ症など皮膚における真菌感染症の改善に使用される外用薬です。

 

「アスタット軟膏(ラノコナゾール)」は「イミダゾール系抗真菌薬」に分類されるお薬で、病院やクリニックなどの医療機関で医師によって発行された処方箋に基づいて薬局で受け取ることができる医療用医薬品です。

後発医薬品(ジェネリック医薬品)について

先発医薬品(新薬)には開発した企業の利益を確保するために、その成分について特許期間が設けられています。

 

特許期間が終了すると、その成分を含み同等性が担保された医薬品が発売されることがあります。これがいわゆる後発医薬品(ジェネリック医薬品)です。

 

後発医薬品(ジェネリック医薬品)は安定性試験や生物学的同等性試験などの試験に合格し、厚生労働省から認可を得ることで発売が可能となります。

先発医薬品(新薬)と同じ有効成分が使用されており、品質や効果、安全性が同等かつ先発医薬品と比較し安価であるという特徴を有しています。

 

しかしながら、皮膚に使用するタイプのお薬(外用薬)では通常の内服薬とは後発医薬品(ジェネリック医薬品)への切り替えに関するルールが異なります。

 

内服薬では医師が先発医薬品(新薬)で処方を行った場合でも医師への確認無しで後発医薬品(ジェネリック医薬品)へ変更することが可能ですが、外用薬では先発医薬品(新薬)から後発医薬品(ジェネリック医薬品)への切り替えに医師への確認が必要となります。

 

クリームや軟膏などの外用薬に関して後発医薬品(ジェネリック医薬品)を使用したい場合にはその旨を医師にご相談ください。

軟膏以外の剤形について

「アスタット軟膏(ラノコナゾール)」には軟膏以外にも、クリームや外用液が存在しています。すべて同じ疾患に対して使用されるお薬ですが、使用感には大きな違いがあります。

 

それぞれの違いは次の通りです。

軟膏:白色ワセリンなどの油分に有効成分が配合されているもの。クリームに比べ刺激が少ないという特徴があります。質感としては少しべとつきます。

クリーム:脂や水の混合物に有効成分が配合されているもの。軟膏に比べて伸びがよく、べたつきが少ないのが特徴です。湿潤作用があり、しっとりとした質感を得たい方に適している剤形です。

 

外用液:水やアルコールに有効成分が配合されているもの。クリームよりもさらにべたつきが少なく速乾性があるのが特徴です。軟膏やクリームタイプと比較し毛髪のある部位へ塗布しやすいという特徴があります。

アスタット軟膏(ラノコナゾール)の成分について

「アスタット軟膏」の有効成分は ラノコナゾールです。ラノコナゾールは真菌の細胞膜を構成するエルゴステロールの合成阻害作用によって抗真菌作用を示します。

 

簡単に作用機序について解説します。細胞にはその形を保つために細胞膜という膜が存在しています。人間の細胞にも細胞膜が存在しており、人間の細胞膜はリン脂質やコレステロールから構成されています。

 

一方、真菌の細胞膜はエルゴステロールという物質を含んでいます。ラノコナゾールは真菌にとっては重要となるエルゴステロールの合成を阻害することで真菌に対して効果を発揮します。

アスタット軟膏(ラノコナゾール)はどんな症状に効果がある?

「アスタット軟膏(ラノコナゾール)」には次のような疾患に効果があります。

白癬
白癬とは皮膚糸状菌という真菌(カビ)によって生じる感染症の一種で、栄養源となる角質が存在する部位であればどこでも感染する疾患です。

感染する場所によって疾患名が異なり、足に生じた白癬は足白癬と命名されていますが、俗称として水虫とも呼ばれます。

股にできるのは股部白癬で、俗にインキンタムシとも言われます。症状は感染部位によっても異なりますがかゆみや乾燥、皮膚のひび割れなどが現れることがあります。

 

カンジダ症
皮膚カンジダ症とはヒトの口腔、消化管、膣などに常に存在している常在菌の一種であるカンジダ属の真菌が過剰に増殖することで発生する皮膚疾患です。

通常は真菌が増殖し過ぎることはないのですが、ステロイド薬の服用、妊娠、抗がん剤治療、肥満、糖尿病などの特定の条件下でカンジタ感染が起こることがあります。

症状として、かゆみやヒリヒリするような痛みが生じることがあります。

 

癜風(でんぷう)
癜風(でんぷう)とは表皮に発生する皮膚真菌症で、鱗屑をともなう変色した斑が出現する疾患です。

正常時にも皮膚に存在する癜風菌が異常増殖し、皮膚表面に鱗屑を伴う斑が多数出現します。

通常、かゆみなどの症状は引き起こしません。

アスタット軟膏(ラノコナゾール)の用法・用量は?

「アスタット軟膏(ラノコナゾール)」の用法・用量は次の通りです。

1日1回患部に塗布する。

塗り忘れた場合には気づいたときに塗ってください。
保湿剤などその他の塗り薬と併せて使用する場合には塗布範囲の広いものから塗るとよいでしょう。

アスタット軟膏(ラノコナゾール)の副作用

「アスタット軟膏(ラノコナゾール)」の副作用として接触性皮膚炎や発赤が報告されています。また、副作用の発現頻度は低いものの、掻痒(かゆみ)や肌の亀裂・乾燥が報告されています。

 

これらの副作用には様々な原因が考えられますが、有効成分自体の刺激性に加え、お薬に配合されている添加剤によって引き起こされることもあります。
これらの副作用が現れた場合には、医師や看護師、薬剤師に相談してください。

アスタット軟膏(ラノコナゾール)に関する注意点

適用上の注意として次のことが挙げられます。
・眼科用として角膜、粘膜には使用しないこと
・著しくただれた患部に対しては使用しないこと。
・誤って経口摂取した場合には適切な処置を行うこと。

妊産婦、授乳婦等への投与について
妊婦、授乳婦および妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することが添付文書に明記されています。[妊婦に対する使用経験が少ないため]

アスタット軟膏(ラノコナゾール)と同じ成分の市販薬はある?

「アスタット軟膏(ラノコナゾール)」と同じ有効成分を配合した市販薬には「ピロエースZ」、「フットガンコーワ」などがあります。

ピロエースZ

第一三共ヘルスケアから発売されている、みずむし、いんきんたむし、ぜにたむしに対する外用薬です。
軟膏、クリーム、外用液の3つの剤形があり、症状や使用感によって選ぶことができます。すべての剤形に有効成分であるラノコナゾールが配合されているものの、剤形ごとにその他の成分や添加剤が異なります。

用法・用量:1日1回、適量を患部に使用

フットガンコーワ

興和から発売されている、みずむし、いんきんたむし、ぜにたむしに対する外用薬です。
クリームと外用液の2つの剤形があり、どちらの剤形にもラノコナゾールが配合されているものの、その他の成分・添加剤に違いがあります。

 

患部の状態にあわせて選択することができ、カサカサタイプの水虫にはフットガンコーワ液、ジュクジュクタイプの水虫にはフットガンコーワクリームが適しています。

用法・用量:1日1回、適量を患部に使用

上に挙げたお薬の中には、「クロタミトン」や「l-メントール」といったラノコナゾール以外の成分が配合されているという特徴があります。

 

一方、これらの市販薬はいずれも効能・効果として「みずむし、いんきんたむし、ぜにたむし」のみが挙げられており、「アスタット軟膏(ラノコナゾール)」のようにカンジダ症や癜風に対しては適用がありません。

 

使用にあたってはお薬のことを十分理解し、正しくお使いください。お薬についてよくわからない場合には、医師や薬剤師、登録販売者に相談することをお勧めします。

まとめ

今回は白癬やカンジダ症など、皮膚における真菌感染症の改善に使用される医療用医薬品「アスタット軟膏(ラノコナゾール)」について効果や使用方法、使用上の注意点について詳しく解説しました。

 

皮膚疾患の中にはかゆみや痛みを伴わない軽微な疾患もありますが、見た目に大きな影響を与える疾患もあります。

つらい症状を我慢せずに早期に治療を行うことも選択肢の一つになるのではないでしょうか。

本記事がお薬の適正な使用に貢献できれば幸いです。

参考文献
アスタットクリーム1%/アスタット外用液1%/アスタット軟膏1%
白癬(水虫・たむしなど) Q1 – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
カンジダ症(真菌感染症) – 17. 皮膚の病気 – MSDマニュアル家庭版
水虫(みずむし)薬ピロエースZについて
フットガンコーワ 新発売

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監修薬剤師 小村 稜
医療編集プロダクションMEDW代表
Webディレクター / 薬剤師

今後の医療に変化をもたらすために、デジタルチーム医療を発足。
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