キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)に含まれている成分や効果、副作用などについて解説
更新日:2024年02月29日
今回は吸入ステロイド喘息治療剤として知られるキュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)について成分の特徴や効果、副作用、市販薬の有無について解説していきます。
キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)とは
キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)は大人や子供の「気管支喘息」の治療に対して使用される薬で、2002年に大日本住友製薬株式会社が販売を開始した吸入ステロイド喘息治療剤です。
従来、吸入ステロイド剤には噴射剤として特定フロンが使用されていました。しかしオゾン層を破壊する恐れがあることから、米国3M社にてフロンを代替フロンに置き換える研究から開発された吸入ステロイド剤が今回ご紹介するキュバールです。
有効成分にベクロメタゾンプロピオン酸エステルを配合しています。では、有効成分であるベクロメタゾンプロピオン酸エステルにはどんな特徴があるのでしょうか?
キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)の成分について
キュバールの有効成分であるベクロメタゾンプロピオン酸エステルは、主に気道の慢性的な炎症を抑制する働きがあります。気管支や肺においてグルココルチコイド受容体と結合し炎症を抑えたり、気道抵抗(気道を流れる空気の通りにくさ)増大を抑制する働きがあります。
気管支喘息は、発作時に息苦しさがありツライ思いをされた方も多いでしょう。
しかし、気管支喘息が落ち着いている時にも気道の炎症が続いており、この炎症が続くことでまた発作が起こりやすく、気道の慢性的な炎症によって気道自体が「せまく」「かたく」なり、この状態が戻らなくなります。そうすると治療によって症状を抑えることが難しくなるのです。
そのため今回ご紹介するキュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)などの吸入ステロイド薬により、日頃から気道の炎症を抑えておく必要があります。
キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)はどんな症状に効果がある?
キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)は、大人や子供の気管支喘息に対して効果があります。では気管支喘息とはどのような病気なのでしょうか?また気管支喘息に対してどのような治療をするのでしょうか?
気管支喘息とは
気管支喘息とは空気の通り道(気道)に炎症が続き、さまざまな刺激に対して気道が敏感に反応してしまうことで、気道が狭くなることを繰り返す病気です。
主な症状としては発作的に咳やたんが出て、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音を伴って息苦しくなるのが特徴で寝ている時や朝方に症状が起こりやすいといわれています。
原因としてはハウスダストやチリ、ダニ、ペットのフケ、カビなどのアレルギーによることが多いですが、原因が特定できない場合もあります。
日本では子供の8〜14%、大人の9〜10%が喘息であると言われています。
気管支喘息の治療
気管支喘息の治療は、病気の重症度に合わせて薬の種類と量を調節して使用しています。
喘息の薬には2種類があり、発作を予防する「長期管理薬」と急に起きる発作を鎮める「発作治療薬」です。
今回ご紹介するキュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)は「長期管理薬」に該当し、別名吸入ステロイド薬とも呼ばれます。「長期間薬」はこの吸入ステロイド薬を基本に長時間効果のある気管支拡張薬や抗ロイコトリエン薬が併用されます。
発作が起きないように発作を予防するためには、この「長期管理薬」を症状がない時にも毎日継続することが非常に大切です。また実際に発作が起きてしまった時には即効性のある気管支拡張薬の吸入やステロイド内服薬などの「発作治療薬」が使用されます。
キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)の用法・用量は?
キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)の用法・用量は以下の通りです。
大人には通常1回100μgを1日2回口腔内に噴霧吸入します。子供の場合は通常1回50μgを1日2回口腔内に噴霧吸入します。
なお、症状により使用量を増やしたり、減らしたりすることがありますが、1日の最大投与量は大人では800μg、子供では200μgを限度としています。
キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)の副作用
キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)は次の副作用が起こることがあります。
このような症状が発生した場合は、使用を中止して医師または薬剤師に相談しましょう。
下記に発生頻度ごとに起こる副作用をまとめました。
【過敏症】
<頻度不明>
じんましん等の発疹、そう痒、浮腫、紅斑
【口腔ならびに呼吸器】
<1%未満>
せき、咽喉頭症状(疼痛、違和感)、口渇、嗄声、気管支喘息の憎悪、口内炎
<頻度不明>
咽喉頭症状(刺激感、異物感、発赤)、感染、口腔カンジダ症、味覚障害、呼吸器カンジダ症、口腔ならびに咽頭アスペルギルス症、肺好酸球増多症
【消化器系】
<1%未満>
悪心
<頻度不明>
食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛
【肝臓】
<1%未満>
AST、ALT、γ-GTP、ALPの上昇
【循環器系】
<頻度不明>
高血圧、動悸
【筋肉・骨格系】
<頻度不明>
関節痛、筋肉痛、脱力感
【精神神経系】
<1%未満>
気分不良、頭痛
<頻度不明>
倦怠感、憂うつ感
【その他】
<1%以上>
コルチゾール減少、鼻出血
<1%未満>
尿糖、白血球増多、リンパ球減少、尿潜血
<頻度不明>
鼻炎、嗅覚障害
キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)に関する注意点
キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)は次の病気の治療中の人は使用してはいけません。
症状が悪化したり、治療が遅れてしまう恐れがあるためです。
・有効な抗菌剤の存在しない感染症、全身の真菌症がある人
・キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)でアレルギーなどの過敏症を起こしたことがある
・デスモプレシン酢酸塩水和物(男性における夜間多尿による夜間頻尿)を投与中の人
結核の人、感染症の人、高血圧の人、気管支粘液の分泌が著しい人、妊娠中の方や妊娠している可能性のある女性、小児、高齢者の場合にも注意が必要になります。使用できるかどうかの判断や使用する際の注意点を医師に必ず相談するようにしましょう。
また基本的な注意としてキュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)はすでに起きている喘息の発作を抑える薬ではなく、発作が起きないように気管支喘息をコントロールする薬です。そのため、毎日規則正しく使用することが大切になってきます。
さらに薬を使用した後には、副作用(口腔カンジダ症など)を予防するため、うがいを必ず実施しましょう。もしうがいができない人は、口の中をすすぐようにしましょう。
キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)と同じ成分の市販薬はある?
キュバール(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)と同じ成分の市販薬はありません。
市販薬には吸入ステロイド剤自体販売されておらず、内服タイプの喘息の薬が販売されていますが、ステロイドは配合されていません。
主に気管支を拡張して呼吸をしやすくする薬が販売されています。
【呼吸を楽にして咳をしずめる市販薬】
・アスクロン(大正製薬)
・ミルコデ錠A(佐藤製薬)
・アストフィリンS(エーザイ)
ただし、市販薬はあくまで一時的な症状の改善になります。
大切なのは日頃から気道の炎症を抑え、発作が出ないようにコントロールすることになるので、気管支喘息の治療は自己判断ではなく医師に相談して根気よく続けていきましょう。
日常の生活における注意点
気管支喘息の原因の1つであるアレルゲン(ハウスダスト、ダニなど)を生活から遠ざけたり、除去することも大切な対策になります。日本人のアレルゲンで最も多いと言われるものはチリダニと言われています。
ダニは増えやすいのは高温多湿な場所や住みやすい環境(人や動物のフケ・垢・カビなどがある、もぐって産卵できる場所)になります。特に布団やじゅうたん、布製ソファやぬいぐるみなどに多く生息しています。
こういったダニが生息しやすいものを洗う、覆う、拭く、除く、除湿することが大切です。ダニは光や50℃以上の高温を嫌うため、お布団などは天日干しをするのもよいでしょう。
また激しい運動やタバコやお酒は発作を引き起こしてしまう可能性があるので、普段の生活からなるべく避けるように心がけましょう。
参考資料
キュバール/添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/400093_2259703G9020_1_16
キュバール/医薬品インタビューフォーム
https://ds-pharma.jp/product/qval/attachment/interv.html
気管支ぜんそく/一般社団法人日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=15
喘息(ぜんそく)の症状・原因/くすりと健康の情報局
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/33_zensoku/
成人気管支喘息/佐々総合病院
喘息(ぜんそく)の予防/くすりと健康の情報局
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/33_zensoku/index3.html#d02
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