カプトリル錠(カプトプリル)に含まれている成分や効果、副作用などについて解説
更新日:2024年02月29日
カプトリル錠(カプトプリル)とは
カプトプリル(カプトプリル)はアメリカのスクイブ社(現:ブリストル・マイヤーズスクイブ社)で開発されたレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系に作用する経口用降圧剤です。
レニン・アンジオテンシン系におけるアンジオテンシンⅠからアンジオテンシンⅡへのアンジオテンシン変換酵素(ACE)の阻害に目標を定めた降圧剤の研究に着目し、広範な実験を展開した結果、経口投与で有効なACE阻害剤カプトプリルの開発に成功しました。
日本では、1977 年に三共株式会社(現:第一三共株式会社)がカプトプリルをスクイブ社より導入・開発に着手し、製造・販売しました。
現在は「カプトリル錠 12.5mg」「カプトリル錠 25mg」「カプトリル細粒5%」の3種類の製品が発売されています。
カプトリル錠(カプトプリル)の成分について
レニン・アンギオテンシン系のアンジオテンシンIIは血圧を上げる物質で、血管収縮作用や副腎皮質からアルドステロンという物質を分泌させる作用があります。
アルドステロンは腎臓に働きナトリウムイオン(Na+)の再吸収に関わることで循環血液量の増加がおき、心拍出量や末梢血管抵抗が増加し、これらの作用により血圧の上昇がおこります。
カプトリル錠(カプトプリル)は上述した通り、アンギオテンシンIからアンギオテンシンIIへの変換酵素であるアンギオテンシン変換酵素(ACE)を阻害する作用を持っています。
では、カプトプリルはどのような症状に効果があるのか解説していきます。
カプトリル錠(カプトプリル)はどんな症状に効果がある?
添付文書上での適応は下記の通りになります。
本態性高血圧症、腎性高血圧症、腎血管性高血圧症、悪性高血圧
カプトリル錠(カプトプリル)の用法・用量は?
添付文書上での用法・用量は下記の通りになります。
通常、成人に1日37.5~75mgを3回に分割経口投与してください。年齢、症状により適宜増減する。なお、重症例においても1日最大投与量は150mgまでとされています。
カプトリル錠(カプトプリル)の副作用
重大な副作用
・血管浮腫(頻度不明):呼吸困難を伴う顔面、舌、声門、喉頭の腫脹を症状とする血管浮腫があらわれることがあります。
このような場合には、気管の閉塞を起こしやすくなるので、直ちに投与を中止し、アドレナリンの皮下注射、気道確保など適切な処置を行うこととされています。
また、腹痛を伴う腸管の血管浮腫があらわれることがあります。
・汎血球減少、無顆粒球症(いずれも頻度不明)
・急性腎障害、ネフローゼ症候群(いずれも頻度不明)、高カリウム血症(頻度不明)
・狭心症、心筋梗塞、うっ血性心不全、心停止(いずれも頻度不明)
・アナフィラキシー(頻度不明)、天疱瘡様症状(頻度不明)
・皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、剥脱性皮膚炎(いずれも頻度不明)
・錯乱(頻度不明、膵炎(頻度不明)
その他の副作用
血液
0.1~1%未満 白血球減少
0.1%未満 貧血、好酸球増多、血小板減少
――――
腎臓
0.1~1%未満 BUN上昇、血清クレアチニン上昇
0.1%未満 蛋白尿
――――
皮膚
0.1~1%未満 発疹、そう痒
0.1%未満 蕁麻疹、光線過敏症
――――
味覚
0.1~1%未満 味覚の異常
――――
精神神経系
0.1~1%未満 頭痛、めまい
頭重感、眠気
――――
消化器
0.1~1%未満 食欲不振、悪心・嘔吐、下痢
0.1%未満 胃部不快感、腹痛
――――
肝臓
0.1~1%未満 AST上昇、ALT上昇
0.1%未満 γ-GTP上昇、ALP上昇、LDH上昇、肝障害
頻度不明 黄疸
――――
循環器
0.1%未満 起立性低血圧、動悸、胸痛、胸部不快感、レイノー様症状
頻度不明 息切れ
――――
その他
0.1~1%未満 血清カリウム値の上昇
0.1%未満 咳嗽、脱力感、発熱、筋肉痛、口渇、口内炎、歯痛の増強、知覚異常、嗄声、四肢のしびれ感、顔面潮紅、クームス試験の陽性例、抗核抗体の陽性例
頻度不明低 血糖
カプトリル錠(カプトプリル)を含めたACE阻害薬では、空咳(咳嗽)の副作用が稀に起こることがあります。
もし服用を開始してから上記のような症状があれば医師・薬剤師にご相談ください。
カプトリル錠(カプトプリル)に関する注意点
基本的な注意事項
・副作用発現の可能性が増大することがあるので、1日用量150mgを超える量は投与しないこととされています。
・手術前24時間は投与しないことが望ましいです。服用している患者さんは手術の前にお薬手帳を持参するなどして、前もって医師・薬剤師に報告をしてください。
・血圧低下に基づくめまい、ふらつきがあらわれることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う作業に注意してください。
併用禁忌・注意の医薬品
「デキストラン硫酸固定化セルロース」、「トリプトファン固定化ポリビニルアルコール」又は「ポリエチレンテレフタレート」を用いた吸着器によるアフェレーシスの施行(リポソーバー、イムソーバTR、セルソーバ)との併用でショック症状が出現するので併用禁忌となっています。
また、「アクリロメタリルスルホン酸ナトリウム(AN69)」を用いた透析でもアナフィラキシーを誘発することがわかっています。
「アリスキレンフマル酸塩」との併用でレニン・アンギオテンシン系の作用が増強されることがあり、副作用の出現リスクが高くなってしまうことから、これらも併用禁忌とされています。
併用注意の医薬品として、「カリウム保持性利尿剤(スピロノラクトン、トリアムテレンなど)」や「カリウム補給剤(塩化カリウム)」、「利尿降圧剤(トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド)」、「アロプリノール」、「リチウム製剤(炭酸リチウム)」、「非ステロイド性抗炎症鎮痛剤」などがあげられます。
併用の確認ができるように、病院や薬局を訪れる際にはお薬手帳の持参を強くお勧めします。
使用禁忌・注意の患者さん
併用禁忌の患者さんは下記の通りです。
・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
・ 血管浮腫の既往歴のある患者(アンジオテンシン変換酵素阻害剤等の薬剤による血管浮腫、遺伝性血管浮腫、後天性血管浮腫、特発性血管浮腫等)
・デキストラン硫酸固定化セルロース、トリプトファン固定化ポリビニルアルコール又はポリエチレンテレフタレートを用いた吸着器によるアフェレーシス(血液成分の分離)を施行中の患者
・アクリロニトリルメタリルスルホン酸ナトリウム膜(AN69)を用いた血液透析施行中の患者
・妊婦又は妊娠している可能性のある女性
・アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者(ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除きます)
その他にもカプトリル錠(カプトプリル)に対して使用注意の患者さんもいるので、高血圧以外の持病がある方は医師・薬剤師にお伝えください。
高齢者
少量より投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与することとされています。一般に過度の降圧は好ましくないとされており、脳梗塞等が起こるおそれがるので注意して使用することが大切になってきます。
小児
小児を対象とした臨床試験の経験はないとされています。しかし、腎血管性高血圧症の診断(カプトプリル負荷試験)で使用されることはあります。
妊婦・授乳婦
使用禁忌の項でも記載した通り、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこととされています。また、投与中に妊娠が判明した場合には、すぐに投与を中止してください。
理由として、妊娠中期及び末期にACE阻害薬を投与された高血圧症の患者で羊水過少症、胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症、頭蓋の形成不全及び羊水過少症によるとされる四肢の拘縮、頭蓋顔面の変形等があらわれたとの報告があるからです。
また、海外で実施された疫学調査で、妊娠初期にACE阻害薬を投与された患者さんにおいて、胎児奇形のリスクが降圧剤が投与されていない患者さんに比べて高かったとの報告があります。
授乳婦では、治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討することとされています。ヒトで母乳中に移行することが報告されているので、産婦人科医と相談して服用するのか、他の薬に変更するのか、中止するのか検討してください。
カプトリル錠(カプトプリル)と同じ成分の市販薬はある?
カプトリル錠(カプトプリル)と同じ成分の市販薬は現在のところ発売されていません。医師の処方のもと、用法・用量を守って服用してください。
最後に
今回はカプトリル錠(カプトプリル)について解説していきました。服用している方で、服用開始してから体調が悪化してくることがあれば早めに医師・薬剤師へご相談ください。
参考資料
カプトリル錠 添付文書・インタビューフォーム
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2144001C1074_3_03/?view=frame&style=XML&lang=ja
ACE阻害薬の解説|日経メディカル処方薬辞典
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf82a4.html
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